こんにちは、相談役の松本です。
Liberal Arts で取り上げているテーマの中に、
【その時々で話題となった、「経済理論、経済・財政運営上の問題点」等】があります。
今までに取り上げている、下記2回分を今回はご紹介します。
第2回 Fiscal Theory of Price Level (FTPL)
クリストファー・シムズ「ジャクソンホール演説」
第12回 国境調整税 「米国下院共和党 税制改革案」
目的地キャッシュフロー税 (Destination-Based Cash Flow Tax)
◆第2回 Fiscal Theory of Price Level (FTPL)
クリストファー・シムズ「ジャクソンホール演説」
「ジャクソンホール演説」は当時大分話題になりました。
※日本財政の持続可能性は?
※アベノミクスや黒田日銀総裁の「異次元緩和」でもデフレ脱却ができない理由とは
資料が分かり難いのですが、シムズ教授の理論は、
「物価水準の財政理論(Fiscal Theory of Price Level=FTPL)」と呼ばれ、
デフレやインフレは金融政策だけでなく、
財政政策が決めるという主張です。
財政支出拡大
→個人や企業が将来の財政悪化を予測
→貨幣価値が下落
→インフレ
という経路で物価上昇につながるとされています。
財政支出の拡大というと、ケインズ政策と同じではないかと
誤解されがちですが、理屈は異なります。
ケインズは不況の時に減税・歳出拡大、
好況の時に増税・歳出カットすると考えます。
対して、FTPLは国の借金の返済原資が足りない場合、
増税ではなくインフレで借金を
「返す」という考えです。
例えば、借金の半額しか返済原資が無い場合は、
100%のインフレで原資の額面を2倍にすれば返せるという理屈です。
ポイントは、政府が、「増税ではなく、
インフレで(借金を)帳消しにすると宣言すること」
(日経新聞2017年1月29日付朝刊シムズ教授インタビュー)。
それによりインフレ予測が高まり、
モノの値段が上がる(お金の価値が下がる)前に
投資や消費をしようとして、モノが売れ、物価が上がるという理屈です。
しかし、インフレで財政赤字を帳消しにするということは、
インフレで預金が実質的に目減りする
国民の負担で財政再建するということです。
公的債務が国内総生産(GDP)の2倍にも達する日本で、
すさまじいインフレが必要になりかねないリスクがあります。
ただ、そのような劇薬でも用いなければ
現在の異常な政府債務を解決する方法はないと言うことでもあります。
◆第12回 国境調整税 「米国下院共和党 税制改革案」
目的地キャッシュフロー税(Destination-Based Cash Flow Tax)
トランプ大統領も貿易赤字解消を目的として、
時代錯誤的保護主義の国境調整関税を提唱していますが、
下院共和党案は税制哲学が全く異なり、
多くの経済学者が理想の税制と呼ぶ制度となっています。
目的地キャッシュフロー税【DBCFT】は
国境調整税と呼ばれてはいますが、
関税ではなく、内外税制格差・内外税率差を調整・平準化し、
不公平で非効率な法人税を初めとした直接税の欠点を補う、
キャッシュフロー(付加価値)に課税する間接税です。