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松本相談役のつれづれ日記⑥ ~gCストーリーの社員が教養を身に付けるために行っていることとは?~

こんにちは。相談役の松本です。
前回は主催している勉強会「Liberal Arts」を紹介させてもらいました。
実はLiberal Arts以外にも、私が主催して日経新聞の輪読を行っています。
(ちなみに、他にももう一つ、【法律・司法・行政の実務】についての勉強会も実施しています)
日経新聞の輪読は記事をテーマに私が課題を出し、各メンバーがReviewを行います。それに対し私が論評するという形で進めています。
経理課所属の精鋭3人をメンバーに週3回を目標にしていましたが、負荷が掛かるため現在週1回程度になっています。
目的は、経済全般、財務、金融、経営、政治、外交等幅広いジャンルに於いて、多視点を保持・俯瞰する視座、裏事情を読み解くスキルを獲得する事です。
課題・解答・論評の流れを簡単にレポートしたいと思います。
◆3月29日【課題】
米国ラストベルト地帯における、白人中年男性の高死亡率の要因について記せ
【解答】
○米国白人男性の高死亡率の要因
1. 国民性として望みが高く、叶わなかったときの失望が大きい。
2. ・(常習性が強く依存症になりがちな)鎮痛剤オピオイドを利用しやすい環境にある
 ・銃が簡単に手に入ることから、自殺し易い環境にある。
3.医療分野や社会保障に関して、低所得者・失業者に対するセーフティーネットがない。
【論評】
1. 死因についての分析がない
① 自殺・殺人
② 薬物依存・アルコール依存による内臓疾患
2. 有色人種と白人種との違い、民族による家族・社会性についての考察がない
◆4月4日【課題】
中国のスマホ決済額が昨年倍増し、米国の50倍、600兆円に膨らんだ
その要因と、ティンセントが果たした役割について記せ
【解答】
■要因
・スマホのQRコードで手軽に決済できるため、専用の端末が必要だったデビットカードからユーザーが移行した。
・QRコードを読み取る機械の、店舗への導入コストが低い
■テンセントが果たした役割
約9億人のユーザーを持つSNSサービスを運用しているテンセントが参入し、それまでスマホ決済のトップシェアだったアリババに匹敵するほどのユーザー数を獲得した。
【論評】
1. 携帯・スマホの導入は、一般的に途上国ほど早い。これは固定電話等のインフラに比べると、途中流路の有線が不要のため、投資効率が高いためである。しばしば電化されていない地区に於いてもスマホ環境が存在する。
2. 中国に於いては、EC決済のインフラである、クレジットカード、銀行振り込み等の基盤整備よりも、投資効率の高いスマホ決済が一挙に進んだ。
3. 日本は規制当局の体制整備の遅れ、リスクを極端に怖れる保守性が、効率化投資の遅れを招いた。
◆4月17日【課題】
世界の宅配事情を俯瞰して最も求められるシステムを考察せよ
【解答】
世界で共通して見られている宅配での大きな課題は、家主が不在で荷物が受け取れなかった時の対応コストと考えられます。(再配達、商品を置き去りにした時の保証コストなど。)
その上で求められるシステムは、
・ドローン、ロボットなどが地域ごとに周回をし、効率的なルートで荷物を届ける仕組
・宅配BOX、預かりロッカーなど、不在にしていてもいつでも荷物が受け取られる仕組
など、課題を解決するシステムだと考察されます。
【論評】
1. 米国では不在時再配達は行わず、不在時はドアの前に放置するのが一般的。
(雨天少なく、クール便がない。クレーム発生時に対処した方が総コストが安い)
2. ドイツでは総人口の5%(日本で言えば600万個)を目標に、街角等の公共場所に、宅配BOXの整備が進んでいる。
◆5月2日(火) 【課題】
石油需要のピークアウトをエネルギー安全保障の面から考察せよ
【解答】
エネルギー安全保障
…  「国民生活、経済・社会活動、国防等に必要な『量』のエネルギーを、受容可能な『価格』で確保できること」(資源エネルギー庁HPより)
経済的リスク=圧倒的に資源保有国に有利な体制。(減産合意による価格の上昇など)
環境対応リスク=天然ガスや再生可能エネルギーと比較して環境への負荷が大きい。原子力発電の動向。
安定調達リスク=新興国のエネルギー需要増大による権益獲得がより困難に。
安全性リスク=アメリカの石油輸入減少にともなう、シーレーン防衛の軟弱化。
イスラーム国台頭など中東情勢の不安定さ。
以上のようなリスクから石油需要はピークアウトを迎えると思われる。
【論評】
1. 石油(原油)を需要面から見ると、大きい方から順に①交通(車両・航空機・船舶等)用燃料、②発電燃料、③石油化学用原料、④家庭用・都市ガス原料等に大別することが出来る。
2. このうち、①交通内燃機関燃料は、EV, PLHV, の拡大、②発電原料は重油・原油から、LPG, LNGにその主力が置き換わりつつあり、また再生可能エネルギーの普及も進む。④のその他の民生需要も電気に置き換わりつつある。
3. このため石油需要は近々、または既にピークアウトを迎えつつある。
4. 従って、今後のエネルギー安全保障の観点からは、LNG, LPG, 安定供給先の確保と分散が重要なファクターとなる。
5. この面で重要なのが、液化が不要なロシアのパイプラインと、米国のシェールガスである。
◆5月20日(土) 【課題】
日本の化粧品輸出が初めて輸入を上回った要因を
日本と欧米メーカーの相違と、欧米市場とアジア市場の特徴から述べよ
【解答】
◯要因:急増する訪日外国人が、帰国後に購入を続ける動きが高まっているため
※日本を訪れた中国人の約5割が帰国後も現地でのリピート購入を続けている。
 各社は中国で生産する現地専用ブランドも展開いているが、高品質の「メード・イン・ジャパン」商品の引き合いが強い。(インバウンド)
欧米を中心とする化粧品輸入額は長い間輸出額を上回っていて、16年の輸入額は3.7%減で、初めて輸出が輸入を上回った。
アジア向け輸出の比率は88%と非常に高く国・地域別で輸出金額が最大だったのは香港(全体の32%)続いて中国、台湾、韓国となっている。
【論評】
1. 化粧品は大きくメイクアップ(MU)化粧品と基礎(スキンケア・SC)化粧品に分けられ、欧米ではMUと香水が、アジアではSCが化粧品の主力を占めている。
2. 欧米で女性の美醜は骨格で決まり、骨格に難がある場合化粧で欠点を補うのは難しい。アジア女性は肌が美しい上に凹凸が少なく平板で、キャンバスに絵を描くように化粧映えがする。アジア女性は一般的に化粧を好み、コストパフォーマンスが高い。
3. このためアジア市場に於いて、日本の化粧品メーカーにアドバンテージがあり、輸出が伸びている。
◆5月16日【課題】
三菱UFJを始め保守的な金融業界が業務の見直しを急いでいる。 世界的に見て、銀行の収益構造がセグメント別にどうなっているか、信託銀行も範疇に含めて記せ
【解答】
『銀行の収益の三区分』
・貸金収益 …預金などによって調達した資金を貸しだし、利ざやを儲けとする。
・役務取引等収益 …手数料ビジネスが多くを占める
・特定取引収益 …金利、通貨、有価証券などの相場の変動を利用し、市場取引によって儲けを得る。(トレーディング目的)
『日本の銀行の特徴』
大規模な産業資本と銀行資本が結びつく産業金融モデルからの脱却が進んでいない。
利ざやの悪化によって貸金利益が低調になってからはリスクの小さい手数料ビジネスへとシフトしていった。特に信託では手数料ビジネスの占める割合が圧倒的に高い。
(たとえば三井住友信託銀行は手数料収益比率60%を目標に掲げている)
一方リスクの高いトレーディング業務はあまり発達していない。
これに対して欧米では銀行ごとにタイプの違いは大きいものの総合銀行でも投資銀行業務に力を入れているところが多い。
また、信託銀行のように資産運用業務をメインで行い、手数料ビジネスで儲けているようなところは少ない。
【論評】
1. 日本国内市場の動向調査時、監督官庁の政策を見る必要がある。特に金融は金融庁の政策運営が各金融機関の経営戦略に強い影響を与えてきた。戦後金融行政は護送船団方式と呼ばれる横並び政策をとり、バブル崩壊後の不良債権処理に於いては、強烈な検査体制を敷き、各企業を締め付けてきた。
2. 3メガバンク体制構築、自己資本比率引き上げ等の国際基準適合、総合金融業化など、グローバルプレーヤー育成・国際競争力整備の一応の目処を付けてきた。
3. 融資判断基準の有担保主義脱却、連帯保証人廃止の推進、事業評価基準に転換を促すなど、低金利政策下金融業を取り巻く環境が厳しくなる中、銀行の収益構造の転換を強く指導してきている。
◆6月4日 【課題】
AI進化の基盤であり、高速化に拍車を掛けた、深層学習と強化学習の原理を記せ
【解答】
機械学習の進歩により、AI進化の高速化に拍車を掛けた。
■従来のAIの学習方法-教師あり学習について
– 概要;犬の画像認識を例とする。
「大量の犬の画像」と「その画像は犬である」というデータを大量に蓄積していく。
その膨大なデータから統計的に画像認識時に、犬かどうかを判断する。
質問と正解を一つ一つ登録、機械を学習させていく方法で、教師あり学習と呼ばれていた。
– 問題点:複雑なシステムになってくると、
・正解かどうかについて、人間の判断では保証できない
・正解を登録する工数が膨大になる という問題がでてくる。
■強化学習について
・今の環境の価値
・今の環境でえらんだ行動の価値
・えらんだ行動によって得られた報酬
を繰り返し評価し最適な行動を選択する、という学習方法を取った。
これにより、検証を繰り返せば繰り返すほど、精度の高い判断ができるようになる。
■深層学習(ディープラーニング)について
生物の神経系の挙動を模した「ニューラルネットワーク」を多層化した機械学習方法である。
– ニューラルネットワークは、複数のニューロンから、シナプスを通じて一つのニューロンに情報を伝達し、一つの出力をするというものである。
ニューラルネットワークとは、このニューロンが網目状につながっているものを指す。
情報の判断を連続して行っていると言える。
– ニューラルネットワークの多層化
識別するための特徴を抽出する層と、特徴を絞り込む層を繰り返して構成し、ニューラルネットワークを多層化する。また、強化学習・教師あり学習を組み合わせることもできる。強化学習で特徴量設計後、教師あり学習を行う。この反復をすることで、人間より高い判断能力を実現することが可能になった。
【論評】
1. 強化学習も深層学習も、人間が機械に教える工数を削減する方法として考案された。
2. 明確な解答が分からないが、良さそうかどうか(人間が)判断が付く場合、あるいは良さそうか悪そうか判断するための基準自体も、学習の過程で決めて行かなければならないとき、統計学的処理を反復して判定結果を現実と照合、真理に近づく方策として構築された。
◆7月25日 【課題】
構造不況業種と言われる造船業界にあって今治造船が61期連続黒字を続けられる理由を記せ
【日本の造船業】
戦後10年もかからずに世界トップに躍り出る(朝鮮戦争軍需景気) →
二度のオイルショック以降、需要が落ち込み減産体制へ →
90年代以降世界的に需要が復活してきたが、減産体制で設備投資が進んでおらず、韓国や中国に追い抜かれる。 →
現在は供給のポテンシャルに対して需要が少ない状況にあり、価格競争が熾烈化、日本の大手総合メーカー(三菱重工など)は苦境に立たされている。
【今治造船が勝ってきた理由】
新型船ではなく、古い型式の船舶の製造が中心。 →
設計・開発コストを低減、建造コストの削減、工法の合理化が進められ、高品質の船を安く大量につくってこられた。(三菱重工などが設計した旧式の設計図を、発注元が今治造船に持ち込んで安く作らせるという流れが、一般的にあった。)
また、安定的に収益を上げられているため、他の日本メーカーが中々実現できない、ドック建設のような大規模投資も実行できており、時代のニーズを捉えることができている。
【論評】
1. 今治造船低コスト体質要因が解析されていない。
2. 今治造船は旧通産省の造船業界再編・集約の方針の下、旧トップメーカーの来島ドックを初めとした企業救済M&Aを契機として規模を拡大してきたが、倒産目前企業の買収であったため、そのM&Aコストは低く、設備を拡張でき国際的価格競争力を保持できた。
◆8月5日 【課題】
稲田防衛相の辞任が、日本のシビリアンコントロール
ひいては民主主義の危機と言われる理由は何か
【解答】
■前提 ・文民統制
第二次世界大戦の歴史を踏まえて制定された、非軍人が軍官を統制する仕組み。
・日報問題について
南スーダンのPKOに派遣した日本の陸自が残した日報をめぐる問題。
ジャーナリストからの日報公開要求に対し、防衛省が「廃棄した」と1次回答したが、統合幕僚監部・陸自とも廃棄していなかった事実が明らかとなった。その上、「防衛省全体で日報の存在を隠蔽しようとした」という情報を陸自がリークしたという報道もある。
これに対し、稲田防衛大臣は隠蔽活動を否定していた。
■日本のシビリアンコントロール、ひいては民主主義の危機と言われる理由
仮に陸自のリークが事実であれば、それにより防衛大臣が退任されられたと捉えられる。これは、文官が軍官にコントロールされ、シビリアンコントロールが成立していないと言えるため。
【論評】
1. 制服組の意図的なリークにより、人事を含めた政策を左右しようという動きは、日本のみならず、米国を始め世界的な問題となっている。
2. これはシビリアンとは何かという問題に帰結する。すなわちシビリアンとは、国民なのか国民の負託を受けた、政治指導者なのかという問題である。
極一部の抜粋ですが、雰囲気はご理解頂けたでしょうか。
僅かまだ半年程度実績ですが、のメンバーの成長には目を見張るものがあります。
今後ともさらなる成長に向けて精進していきたいと思います。

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